霜月 朔(創作)

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記憶の海



残酷な人の悪意に晒され、
罵詈雑言の刃に斬り付けられ、
世間から爪弾きにされ。
私の存在さえ赦してはくれず。

そんな社会で、
必死に生きているのは、
貴方にもう一度会いたいから。

懐かしい想い出の風景の中。
微笑む貴方は、
今の貴方より少しだけ幼くて。
そっと手を伸ばせば、
届きそうなのに。

貴方は私の憧れで、
迷い旅の中の道標。
なのに。
記憶の海に揺蕩う貴方は、
触れる事が叶わなくて。

それでも。
悪意と憎悪渦巻く世間から、
逃げ出すように、
心だけ、記憶の海に浮かべば、
愛おしい貴方が傍に居てくれる、
そんな気がして。
私は少しだけ、
救われる気がするのです。


俺はずっと、
闇の中を彷徨っている。
それは、覚める事のない悪夢。
絶望と憎悪が吹き荒ぶ嵐。

そんな中で、
必死に藻掻いているのは、
君にもう一度会いたいから。

懐かしい想い出の風景の中。
泣きじゃくる君は、
まだまだ、幼かった頃の君。
そっと頭を撫でてあげた、
優しくて温かい記憶。

君は俺の宝物で、
暗闇の中の一筋の光。
なのに。
記憶の海に揺蕩う君を、
抱き締める事は出来ない。

それでも。
終わりのない悪夢の中で、
藻掻き、縋るように、
心だけ、記憶の海に浮かべば、
愛おしい君が隣で笑っている、
そんな気がして。
俺はちょっとだけ、
救われる気がしたんだ。

5/14/2025, 7:42:26 AM