キンモクセイ
僕の初恋の相手はキンモクセイのような人だった。
気高く謙虚なあの人は橙色がとてもよく似合っていた。
1度だけその人に真実の愛について聞いたことがあった。
彼女は「そんなものがあるのなら、もう既に私はここにはいない」と言ってその場を後にした。
いつもの僕であれば、君の手を掴んで
「それなら僕が君の真実になってあげる」とでも言っていただろう。
けれどそのとき、僕の体は石のように動かなくなった。
あぁ気づいてしまった。
僕が恋したのは橙色の似合う気高い女性ではなく
あのキンモクセイの香りだったのだ。
11/4/2025, 10:40:53 AM