『また明日』
いつもの帰り道で別れたばかりだった。
「また明日ねえ」
「うん、また明日」
それが最後の彼女との会話だった。
今その彼女は在るべき場所に在るのだという。
勘違いだとしか思えないが、とある国の、この鎧を着た騎士がいる先にある国の王女と瓜二つで逃げ出した王女を追った先に彼女がいた。
そして私と別れたところをさらった。
「彼女を返して」
「断る。そもそも貴女にはそのようなことを言う権限はない」
「誘拐した人たちに言われてもね」
とりあえずと思って竹刀を持ってきてはいた。
数年ぶりに持った手が震える。騎士が持っているのは切れ味のよさそうな剣だ。勝ち目は無いに等しい。
彼女がいなくなった場所で、たまたまこっちに戻る人影を見かけてこっそり後をつけたらこの様だ。
それでも構える。
彼女と約束した明日を迎えるために。
5/22/2024, 1:33:59 PM