―待ってて―
「――――」
その言葉は約束というより、
僕の中でひとつの季節みたいに居座った。
終わりが来ないまま、
ただ、居続ける季節。
最初の頃、僕は、
時間を数えていた。
あとどれくらい。
あとどれくらいで。
あとどれくらいしたら。
でも、ある日、
数えるのをやめた。
数えても、
減っていかないことに気づいたから。
「待つ」という行為は、
未来に向かうものだと思っていた。
でも違った。
待つというのは、
同じ場所に、
何度も自分を戻し続けることだった。
僕は、
新しい景色を見ても、
新しい人に会っても、
どこかで必ず、
この場所の温度を探してしまう。
ここじゃない、と確認して、
また、戻ってくる。
君は、
きっと覚えていない。
あのとき、
どんな声で言ったのかも。
どんな顔で言ったのかも。
もしかしたら、
本当に、
何気ない一言だったのかもしれない。
でも私は、
その何気ない一言を、
ここまで持ってきてしまった。
捨てる理由が見つからないまま。
あの日の言葉は
時間とともに薄れていく。
写真みたいに
色褪せて
ぼやけて
削れて
あの日、君が何と言ったのかも曖昧になった。
それでも。
君は。
どこかで誰かと時を過ごしている。
僕は。
ひだまりのような君の笑顔を探し続けている。
記憶から切り離そうとしても離せない。
君は僕の唯一の存在だったから。
僕には君しか居ないから。
でも、
君にとって僕は背景の一部。
僕を選ばなくても他の人がいる。
それが、とてつもなく憎い。
ずるい。
ずるいよ。
僕を選んでよ。
僕の心には君が根をはっている。
種を植えても、根だけが伸び続けて、どれだけ待っても花が咲かない。抜いても意味を持たない。
僕じゃだめ?
僕には君しかいないんだよ。
ねぇ、
幸せにするから。
僕は君をずっと待ってるよ。
帰ってきてよ。
「待ってて」って君が言ったんだから。
おねがい。独りにしないで―――
題名:【廃墟の花壇】
2/13/2026, 1:49:03 PM