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「私には何もないから」
というのが姉の口癖だった。
兄弟や姉妹というものは必ずしも平等ではない。両親だって人間だ。いくら子供でも好きなところもあれば嫌いなところもある。子供から見てもそうだということは、数十年生きてきた中で十分学んできたことだ。
姉は私とは違い、とても女の子らしかった。私から見ても美人だと思うし、姉が気づいていないだけできっとモテていたはずだ。
私はというと、陸上部に所属していて、男の子っぽい性格もあり、いわゆる同性からモテるタイプだった。
中学に入って陸上を始めてからは、どうやら素質があったらしくメキメキとタイムを縮めていった。
元からお淑やかというか、自慢しないタイプの姉が、さらにそうなってしまったのは私が中学2年生の頃。
私は県の大会で表彰台に上った。
元々正反対であった私たちは、周囲からはさらに比べられるようになっていた。たぶんそこから姉の口癖が目立つようになったのだ。
姉が中学を卒業する頃、とある男子生徒に告白された。
その男子生徒は、私と同じ学年の野球部員だった。成績はそこそこ、野球でも目立った活躍があったようには見えなかった。放課後、部活の休憩中。誰よりも声を出し、一生懸命に野球に打ち込むその生徒に、私は目を奪われていた。

才能なんて、結局他人の評価でしかなかったんだ。


お題:ないものねだり

3/27/2026, 6:00:18 AM