『明日に向かって歩く、でも』
今俺たちは胴上げをしている。全国高等学校サッカー選手権大会県予選を勝ち上がり、全国への切符を勝ち取ったのだ。全くの無名高校が初めての全国を勝ち取った。その功労者を胴上げしているのだ。
始まりは新人教師だった。大学卒業後体育教師として働いている。そいつが新たなサッカー部の顧問となった。
俺が2年に上がった時だった。1年の県予選は、2回戦敗退。1回勝てたことに喜ぶようなチームだった。
そいつはチームを見てサッカーをする目的を聞いてきた。勝ちたいのか。ゆるゆるとやりたいのか。そう言われて「勝ちたい」と言えないほど俺たちは弱くなかったが、そのためにこれまでの苦しさと、この瞬間の喜びがある。
県大会優勝。胴上げされているのは、新人教師。イケメンで女子からの人気が高く、そいつを見たいがために女子生徒が数名観客席にいる。
ついに勝てた。この喜びを噛み締めて涙を流す。
胴上げが終わり、先生は言う。
「お前ら、喜ぶのはいいが程々にしろ。俺たちは勝つんだ。この先も負けないぞ!」
その言葉で俺は涙を止める。
この先生は、すごい。俺はもう満足していたのに、そいつは最初から全国優勝を狙っていたのだ。
明日からの練習が厳しくなるな。全国の猛者を超える想像とともに今日を終えた。
1/21/2025, 6:54:43 AM