水晶

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『時間よ止まれ』

夜の11時、やっと残業を終え家に向かう。疲れを感じながらの運転だが、この時間国道は朝の様な渋滞が無く走れるのがいい。
その内、コンビニ脇の赤信号で停まった。
…そう言えばここを右に曲がると旧国道だと聞いた事がある。集落の狭い道は危ないので新たに今の国道を作ったらしい。

ちょっと通ってみようか。
ほんの好奇心で入った道は噂通りの狭い道だった。本当に狭いな…と思いながらもうすぐ旧国道を抜ける時、遠くの脇道を曲がった車がこちらに向かって走って来るのが見えた。ところが何故かその車は同じ車線を走っている。

え?何で!?
慌ててクラクションを鳴らす。それでも車は真っ直ぐこちらに近づいて来た。走るのを止め、更にパッシングも加えつつクラクションを連打する。だが車はそのままの状態で、もう、直ぐそこまでやって来た。
お願いだから気が付いて!ああ、時間よ止まれ!
誰かこれは夢だと言って…

ぶつかるっ!と覚悟したとたん、車はひょいと車線変更して何事も無かったように去って行った。
…何だったんだろう、あれは。
私は暫くそこから動くことが出来無かった。

2/17/2025, 5:13:10 AM