月が凪ぐ夜

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その背中を追いかけることなどもうできはしない。
私を過去にして進む君に、私は枷にしかならないから…。
できることならば君の隣を歩いていたかった。広いこの世界の中で、数多い人々の中で、折り重なった想いがあったというのに。確かに君と心から笑いあった瞬間があったというのに。
私は、君を一番にはできなかった…。
大切だった。
好きだった。
愛していた。
だけどそれ以上に、私はどうしても【あの人】を忘れることはできなかった。

「行かないで」
なんて言う資格が私にはない。
もとより私自身が、過去から一歩も動いていなかったのだから。


【行かないで】

10/24/2023, 2:47:25 PM