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担任だったわけでも、印象深いわけでもないが
とある国語教師の一言がやたら鮮明に残っている。

「天気の描写は感情を表すことが多い」



早めに教室に来て時間になるまで読書をする、
まさに本の虫な国語に生きる先生だった。

生徒思いの教育熱心な感じではなく、義務的に授業をこなす淡々とした話し方。
友人らはよく彼の授業をつまらないと評した。

かくいう私も眠気に勝てないなんてこともあった。
正直、ノートに落書きもよくしていた。




日直の日、私はクラス全員の国語の課題を職員室まで届けにいくことになった。

なんとなく受験を意識し始めた頃だったから、
ついでに何気ない質問をしてみた。


「書かなくてもストーリーは進むはずなのに、なぜ天気の描写ってあるんですか。」


この答えが冒頭の一言だった。

正直、私は無理難題を言ってるつもりだった。
意味なんてないと思っていたから。

だから妙に覚えているんだろう。






あれから10年。

雨が降るたびに思う。
今日の雨は誰のストーリーの描写だろうか、と。

最近はなかなかの幸運続きだったので、どうやら私の感情描写ではないらしい。


「ママ!おもちゃ取られたぁ!」

頬をびちゃびちゃに濡らした娘が走って来る。


一生懸命に訴える主人公に、フフッと笑みが溢れた。





【空が泣く】2024/09/16

9/16/2024, 1:25:08 PM