虹に顔を上げることを知った。
道端の花に目を向けるようになった。
雨音のエチュードに耳をすませはじめた。
日々の小さな発見や楽しみはすべて君が教えてくれたものだった。色あせた毎日に色を光を音を与えてくれた。
世界に溢れる何もかもに意味が楽しさが発見があると、輝いた瞳と弾んだ声がそう伝えてくるから。
けれど、だけど、それは。
君という存在があってこそだったのだと今更ながらに思い知った。君が好きだった音楽も料理も植物も君がいなければただの物体でしかないのだと。遅すぎる発見をする。
きっと君は知っていたのだと思う。自分に与えられたリミットを。それを精一杯使って楽しさを輝きを素晴らしさを教えてくれたのだと今ならわかる。それでも……
「君がいないなら……」
5/5/2024, 12:02:02 PM