枯葉。私の住む街には今はほとんど見当たらない。すべて雪の下だ。秋に地面に落ち、冬の雪の下に埋もれ、雪解けの頃はまだその姿を保っている。春の暖気が来てから、少しずつ分解者によって姿を消してゆく。…山の中ならね。市街地では、雪が来る前にブロアーで集めたり、箒で寄せ集めたりして、姿を消してしまう。アスファルトの上では、いつまで経っても枯葉は分解者に出会えない。
さて、そのような環境の中で育った私は、あまり枯葉の風情がわからない。なので、今向かいつつある春のものを(まだ早いけど)思ってみる。佐保姫だ。
佐保姫が来ると桜が咲く、と、聞いたことがある。秋なら秋津姫、春は佐保姫だと。桜が咲いている間は佐保姫が居るそうだ。日本列島に佐保姫が滞在してだんだんに北へ進むのだと。
日本で最も遅く桜が咲くのは、大雪山の桜だそうだ。平均的に、7月に開花する。3月から7月まで、5ヶ月近くをかけて佐保姫の幸いは日本にあるということになる。そして秋には、北から秋津姫がやって来られるから、桜の葉が枯れるのはいちばん先だ。
しかし正直なところ、私には桜の枯葉もなかなかイメージしにくい。スーパーに行けば、年中「桜餅」が並んでいて、塩漬けの桜の葉が巻いてある。枯れてないどころか、美味しく食べられる。
やっぱり私の街の中では、枯葉の風情はわからない。
2/19/2024, 12:54:36 PM