ほむら

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美しいと感じるものは、だいたい儚いものだ。月に叢雲花に風とか、花に嵐とか、桜の花の儚さに例えた言葉は多く存在している。

この前まで満開だった桜も、今では散って葉桜になり始めており、浮かれていた気持ちも落ち着くどころか切なくて薄ら寂しいものになってきた気がする。

「今年も、桜の季節が終わっちゃったね…」
「そうですね…時が経つのは早いものです」

帰りの電車に乗って車窓から桜を眺めながら、彼とそんな話をしていた。その時に彼から教えてもらったのだが、桜の異名として夢見草というものがあるらしい。確かに、桜が散った時の寂しさは、楽しい夢から覚めてしまったかのような感覚に似ているかもしれない。昔の人の感性って凄いんだなぁ、と思った。

「季節の移り変わりに一喜一憂するのって変なのかなぁ?」
「そんな事は無いですよ?貴方のような繊細な心があるからこそ、美しいものの大切さが分かるんだと思います」
「そっか。花が散っても、今度は緑が育つ季節だもんね」
「そうです。良いことは長く続かないかもしれませんが、悪いこともいつか終わりが来るものです。だから、次の楽しみを待ちましょう」

なんか賢い彼なりの励ましを受けつつ、私たちはガタゴトという音だけが響く電車に揺られていた。美しく儚いもの、春は桜、夏は花火、秋は紅葉、冬は雪かなぁとか考えていると、寂しさは楽しさ、美しさを知っているからこそ来るもので、排除するべき悪い感情ではないのかもと思えた。

テーマ「桜散る」

4/17/2024, 10:47:51 AM