とある夜の日、気になっていた人から
「連れていきたい所があるんだ」
と、誘われた。
車で下道を1時間
どこに行くのだろうと期待と不安を寄せながら
木がたくさん生える真っ暗な山道を登っていく
「心霊スポットみたいだね…」
と言うと
『とっておきの心霊話があるんだ』
と切り出した
怖がる私を見て、楽しそうに話していた
そんな話をいくつかしてるうちに
いつの間にか目的地に着いていた
" 暗い山にポツンと佇む広い駐車場 "
" ザワザワと音を立てる木々 "
" 熊出没注意の看板 "
人生終了の鐘が頭の中で鳴り響いた
暗い森の中、何をしに行くつもりだ
そう思った
彼の腕を掴みながら
スマホのライトで足元を照らし
ガクガク震える足で歩いた
少し歩くと小さな看板が見えた
[ 展望台→ ]
……ん?!?!
予想外な展開に"嬉しい"という気持ちがよぎった
だが
暗く何も見えないこの状況で
本当に存在するのか心配で堪らなかった
展望台までの道のりは5分
たったの5分だったが、恐怖でとても長く感じた
彼はそんな私を見てクスッと笑い
『俺がいるから、大丈夫だよ』
『足元、気を付けてね』
と二言。
怖いことを一瞬で忘れさせてくれた
展望台につくと
そこは街全体が見回せる絶景スポットだった
オレンジ色に光る街頭
ビル内から漏れる光
クネクネ道を走る車
観光の街並み
1つ1つがキラキラと輝いていて
イルミネーションみたいで
とても美しく
しばらく見入ってしまった
彼はそんな私を見て
「気に入ってくれたみたいでよかった」
「悩み事があるときに1人で来る場所なんだ」
「まだ、誰とも来たことないんだ」
「でも、○○と一緒に来たいと思った」
「だから誘ったんだ」
そう彼は話してくれた
それから2人でベンチに座り
しばらく夜景を眺めた
その日から何度か一緒に行った
寒い日は手を繋ぎ
彼の上着で温もりを感じ
時にはギュッと抱きしめられドキドキしたりもした
……それから月日は流れ…
彼と絶縁してから早1年
彼はいま何をしているのだろうか
働いていた職場を辞め
どこに行ってしまったのだろうか
元気にしているのだろうか
今日もまたあの山に登っているのだろうか
あの綺麗な夜景を1人見ているのだろうか
夜景を見ると
しきりに彼を思い出し
また、あの夜景を彼と一緒に見たい
そう思ってしまう。
【夜景】
9/18/2024, 4:56:09 PM