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ガタンゴトン。ガタンゴトン。電車が揺れる。泣き腫らした目が痛い。もう海は一生見たくない。手紙を握りしめて、1週間前のことを思い出す。
「──俺さ、死にたいなって思う時があるんだ。」
「どうして?」
「なんかもう自分が生きる未来が見えないんだよ。」
そんな悲しいことを笑いながら言わないで欲しいと思ったが彼にも悩んでいることがあるんだろうと考えて特に何か言う事はなくその話は終わった。今考えれば、それは彼のSOSだったんだろうと思う。そして、それから数日たったある日に彼が、「海へ行こう。」というメールがあり、しょうがないなとため息をつきながら待ち合わせの駅へ行き切符を買った。
「あのさ、いい加減切符くらい一人で買えるように
なってよ」
「難しいんだし、しょうがないだろ。でもいいじゃんお前がいるんだから」
彼にはこういう所がある。マイペースというか、のらりくらりとしていて人がものを教えても、次の日にはケロッとして忘れている。まぁでも一緒にいてつまらなくはないし、こうやって振り回されるのも悪くないと感じるのは絆されてしまっているかもしれないからだろう。
電車に乗り込み、目的地に向かいながら話をする。
「ていうか、いつも突然すぎるんだよ。何かするにも。それで、どこの海に行きたいのか調べたのか?」
「知ってる所だから大丈夫だだよ。ごめん、着いてきてくれていつもありがとな。感謝してる。」
「珍しい。礼を言うなんて、明日は槍でも降りそうだな。」
そんな軽口を叩く。それに彼は微笑むだけでなにもいわなかった。変だと思いながらも到着したので電車から降りた。
「なあ、昼飯食べね? 俺の奢りで今日は好きな物食べていいぜ。」
「嘘だろ? いつも人に奢らせるのにか? ラッキー♪
じゃあ、あの店行こうぜ!」
それから、目当ての店に入り、大学での面白かったエピソード、誰々が付き合って欲しいと告白したが振られただの世間話をして本来の目的地である海へ向かった。
脚だけ浸かりながら彼に顔を向ける。
「いやー、いつ見てもここから見える夕日は綺麗だな。」
「本当、すごく綺麗だ。」
「ていうか、ここに来たことあるんだな。そんなこと一度も聞いたことないんだけど。」
「そうだったかな。」
いつも彼は何かしらうるさいのにずっと静かだ。
「なあ、今日変だぞ。いつも騒がしいくらい明るいのにやけに静かだし。なんかあったのか?」
「───、あのさ。」
「どうした?」
彼が一瞬間を置く。本当に様子がおかしくて心配になる。大丈夫だろうか。
「ごめん心配かけてるのはわかってる、でもなんて言えばいいのか分からない。だけど、最近辛いんだ」
「──え?」
彼が弱音を吐くなんて初めてだった。そして、夕日に照らされた彼の表情は今にも泣きそうで消えてしまいそうな儚さがあった。と同時にもう会えなくなるような気がして焦りながら、手を伸ばす。
「もういい、もういいよ。何も言わなくていい、だから帰ろう。きっと疲れてるんだよ。」
「そうだな。帰ろう、海も見れたし。」
帰り道、お互いに何かを話すことはなかった。別れた後も彼の顔が思い浮かんでなかなか寝付けなかった。
そして、俺は叔父が亡くなったため2日間欠席届を出した。そして戻って来た後知った。彼が失踪していたのだ。大学に来ていないらしく彼の性格上サボるなんてことはないから、嫌な予感がして彼の住むアパートへ向かったら大家さんに呼び止められた。
「あなたは〇〇君の友達ですか?」
「はい。どうかしましたか?」
「実はこれを渡して欲しいと頼まれたの。それと、知りたいなら〇〇市の〇〇海水浴場へ来てくれとも言っていたわ。」
渡されたものは手紙で宛名に「親友へ」と書かれていた。来てほしいと言われた場所の〇〇海水浴場は2日前に行った所だ。準備をしなければ。そして今日電車で
ここまで来た。手紙を開いた。
「これを読んでいると言う事は俺はこの場所で自殺していることでしょう。理由としては俺は大学では表面上皆と仲良くしているだけで嫉妬されていた。そして、俺に暴力を振るっていた父親が借金を残して死んでしまってもう大学にもいけなくなった。でも、今日まで生きられたのはお前がいたからだ。いつも振り回しても笑って許してくれて、たくさん話をしてくれた事ずっと忘れない。だけど、もう限界で耐えられなくなってしまったんだ。ここで自殺することに決めたのは、まだ母親が不倫せずに家族が笑って過ごしていた時に連れてきてくれた場所だからだ。これを見てお前は気付かなかった自分のせいだと思うだろう。それは違う。悪いのは友人を悲しませる俺だ。こんな俺は親友の資格がない。忘れてくれていい、最期にありがとな。これでお別れだ。」
手紙は終わっていた。近くの砂浜を見ると彼のスマホが落ちていた。涙が溢れる。馬鹿野郎。こんな風に突然別れるなんて嫌だよ。海に向かって叫ぶ。
「───それでも君は、大切な親友だ!」
ガタンゴトン。ガタンゴトン。電車が揺れる──。

『突然の別れ』

5/19/2023, 1:13:46 PM