「なあなあ、」
『小説同好会』と記された部屋で、二人の人間が向かい合って座っている。
片方の男はスマートフォンを弄りながら、
もう片方の女は作文用紙で顔を仰ぎながら。
男は、今尚自分の書いた小説をぞんざいに扱う女へ口を開いた。
「別れ際に相手を引き止める一言ってわかる?」
女は男の方に視線を向けて言った。
「急に何よ。別れ際にねぇ?素直に「行かないで〜」とか「もうちょっとだけ一緒に居たい」とかじゃないの?」
女は言葉を捻り出すような声で答えた。男はそれには「ふーん」とだけ返し、その後得意気にアンサーを発表した。
「俺はお前が1番喜ぶ引き止め方を知ってる」
「え?何よ?」
「これから俺の奢りで高級焼肉店行かない?」
「優勝」
9/28/2024, 3:47:55 PM