ふわりと桜が舞う
一つ一つ流れる春の雨は
ただ風に踊るようにして
貴方の前にただ立つ
変わらない穏やかな貴方の顔が今は酷く憎らしい
春が揺れている、風に吹かれる私の髪と
動かない写しの奥、石の下の貴方
去年の夏、車に連れ去られた貴方
赤い赤い花を咲かせた貴方
愛しい愛しい貴方
「私、もう、高校も卒業なの
ねぇ、けれど、まだ寂しの………ねぇ……」
おいていかないで
なんて、声には出ないけれど
「またね」
は、声に出てしまう
風に揺れるその髪が、赤に暮れゆくその空が
今日の終わりを告げる音が
墓前で貴方と会話する事も許さない
「また、くるね」
コツリ、足音立てて歩きだす
ふわりと風が強く拭き、桜を空へと舞い上げて
「 」
────あぁ、置いていくのは私かしら?
聞こえた気がした空声は、きっと気の所為
【進みゆく君へ………──行かないで】
10/24/2023, 9:53:07 PM