noname

Open App

モノクロに見えた景色は。
いつの間にか、色づいていた。

貴方のおかげだ。

分からないものが分かるようになって。
知りたいことを全て教えてくれて。
それでいて、僕を見てくれた。

灰色く濁って、
何にも映さない僕の目は、
気味が悪いって言われたんだ。
なんにも見えない中で、言われる嫌なこと。
心も閉じこもって、余計に。
色が見えなくなっていった。
どうせ、愛してくれない。
だって、こんな目。こんな瞳。怖いでしょ?
だから。諦めてたのに。

貴方は、
何を映しても、
"綺麗にしてしまう"その瞳で。
僕の手を引っ張って。
色づいた景色を、教えてくれた。

分からない、分かる気もなかったものが。
分かるようになって、楽しくて。
知りたかった、知りえなかったこと全て。
貴方は教えてくれた。

貴方のおかげだ。

あんなにモノクロでつまらなくて。
色がない、楽しみもない景色。
おさらばだ。

「どうして、僕を見てくれたの?」

なんて聞けば、貴方は。

「ん〜……私と似てた、からかな!」

なんて、太陽のような、月のような。
何もかもを映してるような、"綺麗な瞳"で笑う。

今日も、その瞳に憧れてる。
今日から、モノクロを忘れていく。
明日には、綺麗な景色が待ってる。

「ありがとう、!僕に、色を教えてくれて!」

――

なんて、君は言ってたね。
ううん、感謝するのは私の方なんだよ。
ねぇ。
君は気づいてない。
いや、
気づかせたくないから、見せてないんだけどさ。
分かってるでしょ?
私の、瞳。

全てを映す。
映し過ぎる瞳。

私にはさ。全て見えたの。
モノクロなんて分かりもしない。
色が全てあって、でも。
その色は、普通じゃなくてさ。

私の瞳には、私が思う綺麗しか映らない。
君がこれを綺麗と言うのならば、
思考が同じなのかもね。

けど、そんな時に会ったのが君なんだよ。
私の瞳。
異常で、異端で。
奇妙で、魅力的だから。

何にも映さない君の瞳に。
少し、羨ましいと思ったんだよ。
私と、真反対。
全てをモノクロに。
色を映さない、君の瞳。

でもね、
私の瞳は綺麗なものしか映さない。
なのに、さ。

君の瞳は。

色が、あったんだよ。

意味が分からないよね。
君だけだったんだ。
唯一。
綺麗で、美しくて。
ずっと見ていたい程魅力的なのに。

色があって、色がない瞳は。

それからさ。
私は、実感したんだ。
これが普通じゃなくとも。
君にとっては。
とても、すごいものだって。

それを感じ取ったらさ。
なんだか、私も嬉しくて。
初めて、普通に見てくれた色だったから。

だから、感謝を言うのは、私の方。

「……どういたしまして。そして、
ありがと。私に、」

私に、私を。

見てくれて。

――

モノクロな彼女が色を取り戻す話。
カラーだけだった彼女が心の色を知る話。

9/29/2025, 12:19:07 PM