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「どんだけ離れたって、俺ら一緒だよ」
そんなことを言っていたアイツは、すぐに俺から離れていってしまった。約束してきたのはそっちだったのに。
アイツの言葉通り、いつかはまた一緒になれるかもしれないと思っていた。だから、待っていた。
それは、ただの俺の願望でしかなかった。

アイツは、もう他の奴といる。もう俺のところへは戻ってこない。おれの隣には、もうアイツはいない。
アイツには、届かない。

別れ際、アイツは怒っていた。想像以上に非道いことを言われたし、もういい、めんどくさいとも言われた。

散々そんなことを言われたのに、まだ戻ってくるかもなんて馬鹿なことを思っていた俺が哀れすぎて、笑えてくる。
それでもやっぱり諦めきれなくて、努力して強くなった。
人間としても、強くなれた。

久しぶりにアイツの前に立った。
アイツは何も変わっていなくて、変に安心をした。
当のアイツは、何にも興味がなさそうにして俺に関心をなさない。やっぱり、アイツはもう俺のことをどうでもいいと思っているらしい。まあ、会った瞬間からそう思っていたのを、おれが知らないフリをしていただけか。

「…もう、いいか」
そろそろ、俺も諦めどころだ。
これ以上固執していたって、どうにもならない。
無駄な時間だ。アイツはもう俺を忘れて前を向いているのに、俺はまだアイツを忘れられない。
そんなのは、不公平だ。
だったら、俺も忘れてやる。

もう、俺の人生にアイツはいらない。
俺の隣に、アイツはいらないんだ。

4/26/2025, 2:05:18 PM