悪魔執事と黒い猫 二次創作
『終わらせないで』
主様と過ごす時間は、春の朝に見る温かな夢のようだ。
「本日の紅茶は林檎とバニラのフレーバードティーをご用意しました」
ふとした拍子にシャボン玉が弾けるように醒めてしまうことを知っているから、気が付いていない振りをしてその幸福に浸る。
「パウンドケーキもご一緒にいかがですか?」
浮き上がってしまわないよう、そっと海の底を蹴って歩くように。
「こんなに素敵な主様にお仕えすることができるなんて、私は幸せですね」
夢を夢だと自覚しなければ、それは現実と変わらないから。あともう少しだけ、知らない振りをさせていて。
「この後はお散歩はいかがでしょう。庭の千日紅が見頃ですよ」
だからどうか……
11/28/2023, 2:51:33 PM