回顧録

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ここではないどこか、今ではないいつかでお会いしましょう。と言ったっきり彼は居なくなってしまった。
彼がいた証は、文字しかない。しかしデジタルタトゥーというものは凄いもので、世界が彼を消しても世間は彼を残してくれた。同じ話題、同じ声色、同じ風景。
彼の言葉をなぞれるようになって、彼が帰ってこないことを理解した。

ある日彼は帰ってきた、同じ声色、同じ趣味、でも違う姿形。
話題がそっくりだって、趣味がそっくりだって、思考がそっくりだって、似たような言葉選びだって、聞きたかった言葉は聞こえない。

『彼ではないだれか』


作者の自我コーナー
お題を見たときにあの胡散臭い声と顔が思い浮かびました。今のあの人も好きだけど、やっぱり求めているのは別物。

6/27/2024, 10:17:17 AM