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空から言葉と共に音楽が降ってきた。

「この曲か」

思考の海の番人は、「本体も好きだな」と一人ごちると空を見上げた。

言葉と音を宿したそれは、キラキラとした光を纏いながら思考の海へと落ちていく。
海へと降り注いだ光は、海面に触れてもすぐには消えず、ボォッとした光を放っている。

純度の高い言葉と音である証だ。
言い方を変えれば、本体が好んでいる証でもある。

その音楽は、一人の男性アーティストによって作られたものだ。
豊かな言葉と壮大なメロディーで成り立ち、感性を刺激する特別な何かを持っている。

思考の海は、色々な言葉が降り注ぐように出来ている。
物語や専門書の言葉だけでなく、現実の体験で得た言葉など、本体の目や耳を通った言葉はここにやってくる。

物語の持つ繊細な言葉の雨も好ましいが、言葉に光と音を纏って降り注ぐ音楽の雨は格別だ。

潮騒ばかりが響くこの場所も嫌いではない。けれど、豊かな音色に触れると世界に光と色があることを思い出させてくれる。

何故、物語よりも少ない言葉と音だけで成り立っているのに、色や情景が浮かび、時に風や温度、四季や時刻すらも感じるのだろうか。

音楽の不思議である。

不思議だけれど、心地良い。
降り止まない音楽の雨は、やはり大歓迎である。

思考の海の番人は穏やかな顔で、空から降る音楽に耳を傾けた。

5/25/2024, 2:28:14 PM