そうだ、花束を贈ろう。とっておきの花束を。
花束だ、花束が1番彼女に似合うだろう。
本数は多い方が喜んでくれるだろうか。
それとも花の意味を調べてから贈った方がいいだろうか。
彼女はキレイだった。花のように。そこら辺の雑草なんかとは大違いで、向日葵みたいな、他より頭1つ抜けてキレイだった。すらっとした身体にスズランのように白く透き通る肌、可憐な瞳、彼女の何もかもが私を魅了した。
彼女の声がどうしても聞きたくて、自然風を装ってわざとぶつかったら、そこらの人には到底出せない、綺麗な、綺麗な子をしていた。まさに鈴のなるような声、だった。
彼女の事が好きになった私は、何とか会話にこじつけて、数日後会う約束をした。
約束の場所はオシャレなカフェだった。彼女が指定した場所である。
カチコチになりながら先に座っていると、後から白い服に包まれてやってきた彼女が来た。
面と向かって話そうとするとどうしてもぎこちなくなってしまう。
彼女は店員にアイスティーを頼んで、私はコーヒーを頼んだ。
コーヒーは苦手である。だが彼女の前で頼んでしまった手前キャンセルなど出来ない。(というかカフェで頼んだ後にキャンセルなんてできるのだろうか?出来たとしても恥ずかしいのでしたくない。)
だからせめて砂糖をたっぷり入れて飲むと心の中で決意。
そんな決意をしている中無言の空気に耐えられなくなったのか彼女から話しかけてきた。
彼女の言葉は一言一句覚えたいのだがなにせお嬢様言葉なのでお嬢様という言葉に無縁な私は覚えることが叶わなかった。なので要約しながら語らせてもらう。
何故私をお茶に誘ったのかと聞かれ、とてもあなたが綺麗だったからと言ってしまった。
見た目で判断するクソ野郎だと思っただろうか。私に話しかけてくれたのにこんなクソみたいな回答で申し訳ない。
そうだったのですか、と微笑み受け流してくれた。なんて優しい方なんだ。そんな彼女にまた惚れた。
今度は自分から質問しようと思ったがなかなかいい質問が思い浮かばず、なぜか突然好きですと彼女に愛の告白をした。本当になんでだ。いくらなんでもムードと脈略が無さすぎる。言った瞬間から後悔した。あぁ、なんでこんなこと言ってしまったのだろう、普通もっと親交を深めてから言うものであろう。と自分を責めに責める。
するとまた彼女は微笑んで、私もですよ、なんて言葉を私に投げかけた。その時の感情と言ったら驚いたの一言でしかない。驚きと、驚きと、戸惑い、その3つである。
じゃ、じゃあ私とお付き合いを…?と聞くけば、ええ、とまた微笑んだ。
微笑む姿が女神のようだった。
そしてカフェから出ると私は花束を贈ることにした。
花屋について、桔梗の花束を彼女に贈り、正式なお付き合いが始まったのであった。
『花束』
2/9/2024, 11:06:35 PM