お題《最初から決まっていた》
黄昏に抗い、暁に消える。
そう運命づけられた命だったとしても。
おれは。
おれだけは。
君の――理解者でいよう。
「みてみて!竜の仔拾った!」
「猫を拾ったみたいな感覚で、言われてもだな……」
「一緒に育てない? ハクはえらい立場の人間だから、なんとかなるでしょ」
「どう考えたらそうなるんだ」
相変わらず突拍子もないことを言う。
もしここで断ったとしても、絶対あきらめることのない性格である事を知っている。――あきらめが悪いんだよな、本当に。
おれと一緒にくるのは、どんなに危ないと言っても絶対ついてくってきかないし……思わず頬が緩んでしまう。
「この仔、名前なにがいいかな〜? メシアとかどうかな?」
「“救世主”か。でもまたどうして?」
「ハクの部屋で、読んだ本に出てきたんだ!」
「ああ――昔兄さんが買ってくれたはじめての……」
《――僕からすべて奪った。だから僕も、そうするよ》
愛しい彼女の声が、遠く遠く聞こえた。
8/7/2022, 11:48:47 AM