喜村

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 僕はあまりたくさんのご飯を食べることができない。体質的にご飯をあまり食べられないのだ。

 冬のある日、部屋のコタツの上に、みかんがあった。
 でも、もちろん、みかん一個を食べきるのも容易ではない。嫌いなわけではなく、本当に喉を通らなくなるのだ。
 そんな僕の体質を知らない人は、どうぞどうぞと食べ物を差し出す。遠慮ではなく、本当に食べきれないから食べないだけなのに。
「お兄ちゃん、みかん半分こしよ?」
 年の離れた弟が、僕にみかんを差し出す。
弟はまだ4歳で、体質ではなく胃袋の大きさ的に、みかん一つでお腹がいっぱいになるようだ。
「そうだね、食べよっか」
「むーいーてー!」
「はいはい」
 まだ上手くみかんの皮を剥けないので、僕が剥いて半分こにしてあげる。
 いつか弟の方が、みかん一つを余裕で食べきれるようになるだろうけれど、それまでは、僕と一緒に仲良くみかんを半分こして食べようね。


【みかん】

12/29/2022, 10:43:45 AM