menbo

Open App

「さくちゃんのお母さん、亡くなったんだって」
買い物袋をキッチンに置いて、マフラーを外しながら母がいった。
「え?さくちゃんって小学校の?」
「そうそう、さくとくんよ。仲良かったじゃない」
ソファでくつろいでいた雅也は、驚いたが、まだ、高校生だ。身近な人の『死』は、よくわからない。

その日の夜、雅也はベットに寝転び天井をぼーっと見ていた。
雅也のなかで、さくちゃんは、小学生のままだ。中高はなればなれになってから、一度も会ってない。
最後の運動会。リレーのアンカーだった雅也は、バトンを落として最下位。まわりのため息や罵声が聞こえる中、さくちゃんだけは「がんばれ、がんばれ!」と応援してくれたことを思い出した。

さくちゃんの母の葬式。
すすり泣く声が響く。
「まだ、若いのに‥一番下の子は3歳だって」
「これから大変ねぇ」
同情と悲しみに包まれた空気に、雅也の目頭も熱くなり、唾がうまく飲み込めない。
高校生になった、さくちゃんを見た。
周りの大人が泣いてる中、涙をこらえて毅然と立っている。
雅也は、泣くのをぐっと、こらえた。
かわりに、さくちゃんにエールをおくった。
(がんばれ!がんばれ!がんばれ!)

3/17/2026, 3:03:45 PM