時間よ止まれ
時計を握りしめ強く願う。
あれだけうるさかった音も人や車の動きもピタリと止まった。
どうやら本当に時を止めれるようだ。
道端で辛そうにしていたおじいさんを助けたら貰ったもので、
「時が止まって欲しい時に強く願ってみなさい。
君の気持ちに応えて時を止めてくれるだろう。」
そう言っておじいさんはスッと立ち上がり去っていった。
止まった世界はものすごく静かで、孤独感が募る。
この力で誰かを救えるなら...
そう思ったが止まった大型トラックを見つめていると
過去がフラッシュバックする。
焼けたアスファルトと血の匂いに
けたたましい救急車のサイレン。
...時計を握りしめ強く願う。
"もし...あの頃に戻れるなら..."
目をぎゅっと瞑って少し経ったあと目を開いたが
世界は止まったまま。
時を止めても、過去には戻れない。
もういい。時間よ進め。
冷めた気持ちでそう思うと時間は進み出す。
さっきまでの静寂が恋しくなるほど
世界も頭の中もうるさくなった。
この時計は...本当のもしものためにとっておこう。
まずはこの時計を大事にいれる何かを買いに行くことにした。
語り部シルヴァ
9/19/2024, 11:12:26 AM