ももく

Open App

 驕ったのだ。
 そう、老婆は語った。
 
 代々の、というほどは長くはないが、故郷と呼ぶには十分な時間を、そこで費やした。その街を捨てるという選択をしたことは、大きな決断だった。
 否、その決断は迫られただけのこと。
 最初から、この街を作ったこと自体が、誤りであったのだ。
 驕り⸺ただの人間にすぎない我々が、太陽に近づこうとした結果が、その翼をもがれるというこの状況になった。

 しかしね。と、老婆は目尻を緩めた。

 わたしたちは、街を捨てたけれども、街を焼くことはできなかったのだよ。
 許されざる存在だとしても、わたしたちの故郷だったからね。

 いつか、いつか我々がその驕りを許されるのならば。
 我々は故郷に帰れることもあるのかもしれない。
 ひとは、変わっていけるものなのだから。


『変わらないものはない』

12/26/2024, 11:02:05 AM