茎わかめ

Open App

フィルター
2025/09/10 最近書く時間があまりない。

 引き出しの取手を引く。気持ちが速って、中身がカタンと揺れる。……よかった、どれも溢れていない。
 四角い区画を埋め尽くすようにあった小瓶は、中身が空のものが多かった。詰まっているのは残り数本。また貰いに行かなければと思うが、ボーナスは少なくとも一週間後。耐えられるような気がしなかった。
 耳元で声がした。いや、幻聴かもしれない。しかし、確かに肩に重みを感じ、小さな吐息が耳に入る。あぁ、あぁ。
 堪らず小瓶を取り出し、こくんと飲み干した。とろりと流れる中身は、単三電池を思い出す。それくらいの大きさ。電池を開けて中身を出したら、こんなものなんだろうと思う。もっと早く知るべきだった。そうだったらいいのに。

 視界が白くぼやける。きらきらだ。ふわふわして、部屋に置き去りにされたぬいぐるみが話しかけてくる。それに笑顔で応えて、お茶をしようとコップをだした。ぼちゃ、と音を立てて中身が注がれ、ついでに小瓶を放り込む。アクセントにぴったり! お茶の用意は完璧だ。あぁ、でもそういえば、茶菓子がない。急拵えだが、煎餅を出す。文字が書いてあるが読めない。海外の菓子なんだろう、読めないから。それでぐるぐるとかき混ぜて、ユニコーンとぬいぐるみで茶会をする。あ?
 毒だ。これは。きっと悪魔が入れたんだ、さっき肩にいたヤツで、あ、どこに、あれ?
 視界がぐるんと回って、それで。

「おはようございます!」
 元気に朝の挨拶。いつも通りの会社で、いつも通りの自分だった。

9/10/2025, 1:04:49 AM