あまり

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ナイスアイディア!を思いつくのは大抵夢の中
急げ、目が覚めるまでにメモれ!と
必死に殴り書く私
いや、夢の中でメモっても意味無いし!
と放り投げるまでがワンセット
そのことだけは強烈に覚えているのに
肝心の、ナイスアイディア!は
微塵も覚えていない

やたらカラフルな夢を見るときがある
夕刻の空に虹がかかり
信じられない純度で星が輝きはじめる
急げ、目が覚めるまでに写真を撮れ!と
必死にスマホを取り出す私
いや、だから夢の中で撮っても以下略

夢の内容をあらゆるメディアでそのまま現像してくれる
そんな機械があったら良いと思う反面
それは夢の外に持ち出したら
案外チープでつまらないものかもしれないとも思う
だから今度こそ必死にならず
ただただ夢を楽しもうと思うだけれど
そんなこと夢の中では
微塵も覚えていない

ままならないゆめうつつ


『目が覚めるまでに』


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五感の刺激を伴う記憶は長く残るものですね

一番はじめの記憶は
茶卓の上の白いカップ
とても苦くて少し酸っぱい水

見送りに来ない我が子に少ししょんぼりの父を送り出し
母が居間へ戻るとそこには
飲み残しのコーヒーカップを抱えた1歳半幼児
いわく、
「やっぱりブラックは美味い」

さながらホラーだったと後に語った母と
生まれつき強がりだけは一人前の子
双方に衝撃がはしったひとコマ

2番目の記憶は
何から何まで白い部屋
鼻の奥がツンとする 居心地の悪い匂い

窓からのぞく空と
父の入院着だけが薄水色で
こすったら消えそうな真昼の細い月と
何から何まで細い父と
全部が全部 穏やかで生暖かくて気持ちが悪かった

人生長く残るのは
上手く飲み下せない思い出と
優しい記憶ばかり


『病室』

8/3/2024, 11:57:32 AM