麦わら帽子
「麦わら帽子が欲しい」
自由人な弟が呟いている。さっきまでONE PIEC◯を読んでたか見てたのかな。麦わらと聞いて一番最初に出てくるのがそれなんだもん。
「昔さ、俺とお前でおそろいの奴あったじゃん。リボンだけ色違いの」
「あー!」
あれは、ママが買ってきてくれたんだっけ。男女とはいえ双子だから、ママも張り切って服を用意していたんだよね。
色違いのお揃いや、男女でも似たようなコーデができるものが多かったかな。ちなみに麦わら帽子は、私が赤いリボンで弟が青いリボンだった。偶然にも好きな色が被らなかったから、ママも集めやすかったかもしれない。
「どうせもう入らないしさ、改めておそろっちしようぜ」
「やだ」
「なんでだよ」
「あんたがいろいろ調子に乗りそう」
「仲良しアピール付き合えよ」
「いまさら要る?」
おそろいの帽子を手にしたその日のうちに、かまちょの弟なら「昔みたいにイロチコーデしようぜ」って迫ってきそうだ。予め断っておこう−−って、思ってたんだけどね……。
なんともまあ運命ってのは皮肉で、断った矢先にフォルムも色合いもすごく好みな麦わら帽子に出会ってしまった。しかも、リボンのカラーバリエーションがすごく豊富だ。私の赤と弟の青どころの話じゃない。あれかな、昨今の推し活に対応してる説ある?
「……たまにはいっか」
乗ってやろうかな、今回は。本当は欲しかったし。
綺麗な緑色のリボンも選べるようだから、ふたりでお揃いじゃなくって翠目の後輩も巻き込んでしまおう。思わずニヤリと笑っていた。
(いつもの3人シリーズ)
8/11/2024, 10:58:02 AM