ハイル

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【命が燃え尽きるまで】

 磔にされた私の足元で、炎がパチパチと音を立てて徐々にその威力を増していく。
 周囲を取り囲むのは有象無象の民衆だ。皆下卑た笑みを浮かべながらこちらを見上げている。
 一人の男が言い放つ。

「悪魔に魂を売った卑しい魔女め!」

 その一声により、周囲の有象無象もあとに続く。

「このアバズレが!」「あれもお前がやったんだろう!」「早く死んでしまえ!」

 一人が石の礫を投げると、同じように礫がいくつも投げられた。例え小さな石であっても、それが一定の距離から力を加えられて投げられればそれなりの拷問となる。
 下半身を覆い尽くし始めた炎に包まれながら、体中を礫に痛めつけられ、苦痛のあまり私は獣のように呻いた。

「うあ、うあああああ‼︎ うぐああああ‼︎」

 思考はこうも澄んでいるというのに、口から吐き出される音は言葉にはならなかった。
 煙が肺に入り込みいやに息苦しい。朦朧とした意識の中で、私は周りを取り囲む悪魔共を睨み付けた。
 悪魔共は、磔となった私の周りで笑っていた。人間の皮を被って、気味の悪い笑顔を貼り付けていた。
 私は呪った。この境遇を、周りを取り囲む悪魔を、この世に人間として生を受けた自分自身を。
 この身が焼け爛れ命が燃え尽きるまで、ジュクジュクと皮膚が溶け始めるのを感じながら、私は全てを呪い続けた。

9/14/2023, 1:09:16 PM