白糸馨月

Open App

お題『あなたへの贈り物』

「ところで貴方、なにが欲しいんですか?」
「どうして急に」
「も、もうすぐ誕生日なのでしょう? べ、べつにスマホをのぞき見したわけじゃないですから」
 目線をそらして彼は窓の外を見つめる。そういえばさきほど友人とのLINEで「誕生日プレゼントなにが欲しい?」と聞かれたばかりだ。彼はそれを見てしまったのだろう。そういえば目の前の大切な人には言ってなかったなと思う。
「では、一緒に買いに行きますか?」
 と席を立ってみる。彼と視線が合う。顔がどこか赤いのは気のせいだろうか。
「あ、やっぱ……やっぱりいいです。自分で探してきますから」
 あわてて顔をそらしたりなんかして、照れているのを必死になって隠そうとしているのがかわいい。
「あなたに選んで欲しいんです」
 そう言うと、彼はこちらの顔をちら、とうかがった。
「わ、わかりました。そこまで言うんでしたら」
 唇をとがらせながら喋った彼は席を立つと、足早に自分よりも先に部屋を出た。そんな様に愛おしさを感じて自分も彼の後をそこまで急ぎもせず追う。自分は背が高く大股で歩くらしいので、彼にはすぐ追いついてしまった。

1/22/2025, 11:47:37 PM