また、あの夢を見た。
どこか見覚えのある真っ暗な街を、目の前から忽然と、姿を消してしまった君を探して走り回る夢。
――まだ探すんですか。
何処からか響き渡る君の声を頼りに、誰もいない建物の中を探す。
息が上がるのも構わず、重たい足を持ち上げて階段を駆け上がる。
長い長い階段の先に君が居る気がして、上がるにつれてキツイ螺旋状になっていく階段を身をくねらせながら登っていった。
――見つかりっこないですよ。
階段の終わり、丸い小さな穴に頭をねじ込み、中を見渡した。
狭い一室、不気味な程大きな月に照らされた窓辺に人が居る。
こちらに背を向けてはいたが、君だと直感した。
両腕に力を込めてズルリと足先を抜き部屋に入ると、君のすぐ後ろまで近寄り。
「 」
君の名前を呼ぼうとして口を開いたが、どうしても出てこなかった。
いつも側に居るのに、愛しているのに。
――なんで、どうして?
縋るように見つめた背がゆっくりと動いていき、君が振り向いた。
――だって、きみ。
振り向いた君の顔は真っ黒に塗り潰されていた。
――わたしのこと、なにもしらないんだから。
一度も聞いたことのない君の嘲笑。
暗く狭い室内に反響したソレは、目が醒めた後も暫く、耳にこびりついて離れなかった。
テーマ「後悔」
5/16/2024, 9:23:39 AM