霧夜

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「今日も空が綺麗だな」
「?今日の天気は曇りだぞ?」
「うん、分かってるよ」

彼は心底不思議そうに首を傾げながら、再び空に目を向けた。
今日の空は、重苦しい灰色の雲に覆われている。
感覚は人それぞれだが、大体のやつはこの天気の中で空が綺麗だなんて言わないだろう。
しかし、俺の目には、今日の空も美しく輝いているように見える。
雨の日も曇りの日もどんな日だって、俺が見ている空が綺麗じゃなかったことなんて無い。

雲一つ無い、晴れやかな空。
それは、彼の髪の色だった。
少し濃い青の空と、薄い青の空は彼の瞳の色だった。
俺の空はいつだって彼一人だった。
太陽が輝くように笑い、雷がなるように怒り、雨が降るように涙を流す。
俺だけが分かる、本人でさえ知らない俺だけの空。

だから俺は、あいつの事を見ながら、今日も今日とて彼にこの言葉を伝える。

「今日も空が綺麗だな」

7/16/2023, 10:12:33 AM