『夢を描け』
そんなのやめときなさい
そう言って、私の目の前で
私の描いた夢の絵を
破り捨てられた
……親の手によって
今ならわかる
例え世間がわかってない子どもでも
やっていい事とよくない事が
あるのではなかろうかと
ましてや自由に自分を
人生を思い描くだけの時間でさえ
間違いがないにもかかわらず
真っ向から、
そしてそれも否定から入ったのだ
…今も、あの日の衝撃を
時々思い出しては怖くなる
私の好きは…、否定されるの?と…。
自分の好きを
自分で肯定できなくなって
それなりの月日が流れると
その「しこり」は 禍根となって
徐々に現れてきた
私の否定されてきた「好き」を
世間の人達は堂々と行ってるのだ
…私のされた否定はなんだったの?
…私の今日までの我慢はなんだったの?
その気持ちを抑えることで精一杯で
今日までの我慢が馬鹿らしく思えて
私はだんだん…
自分の全てが分からなくなっていく…
【―――では
もう一度、描いてみますか?】
……ハッとした
どこ!?ここ!?
―おっと、すみません
驚かせてしまいましたか?
……だ、だれ!?
―ぁ~大丈夫ですよ
ここは夢の世界【星の図書館】です
いつでもお帰しすることは出来ますし
わりといつでも来ることもできます
私は、ここの管理人です
は、はぁ……
―さて、ほんの少しだけ
心の声を聞かせてもらってました
もし良かったら…
描いてみませんか?
……はい?
―色鉛筆などはありませんが
自由に描ける星空がありますよ
…え?星空?描ける?
……夢ってホントに
なんでもありなんだね…
―はい、なんでもありです
ですので、描いてみませんか?
…でも…それは……
―私に否定されるかも、と?
………―――!
―そうですね…
肯定する理由か、
はたまた
否定しない理由か
どちらになるかは分かりませんが
こちらの本を
ちょっと覗いて見ませんか?
…?なにこれ?
アルバム?いや…スケッチブック?
―どちらでもあります
さらに言えばそうですね…
「星の自由ノート」とでも言いましょう
そちら、自由に見て見てください
名前などは上手くふせてありますし
その相手様たちからも了承は得てます
…はい。(ペラッ)
…え?なにこれ??
―それはどなたが書いたと思いますか?
そちらはつい先日40代ぐらいの人が
自由気ままに描きたい!
との事でしたので、
とにかく自由に描いたものです
…なにかわかりますか?
…これは……?
ん〜…か、かがみもち?
―わかりますか?
それ、「帽子をかぶった白猫」
だそうですよ?
…なっ…!?
―ちなみにその人の夢は
世界一の画伯だそうです
…ちょ!?こ、これは…!
―っふふ。
ね?面白いでしょ?
ちなみに今は
鉛筆1本でちゃんと猫だと
わかる程度の絵をお描きになって
少しは人気が出始めてるそうですよ?
…え?
―(パチンッ)
このタブレットをどうぞ
そのページに進んでますので
…ぁ、可愛い
え?あの…これ…
同じ人…ですか…?
―ええ、同じ人ですよ
まぁそこに至るまでに
その人なりの努力が
沢山あったようですけどね
…………。
―それもひとつひとつは
はたから見たらほんとに些細な
小さな小石でつまづいてるような
それぐらいその人には
絵を描く才能と言うのが
少なかったみたいですね
そのせいで、沢山の
心無い言葉もその方には届いてたようで
……………っ
―ですが、長い時間をかけて
ようやくその域まで達しました
形や人数はどうあれ
その人もその人を知る人の声も
とても楽しそうでしょ
…どうして、続けることが
出来たんでしょうか…?
―それはその人に聞かないと
正確には私にも分かりませんが…
ただそうですね…
私にも言えることがあるとするなら
ただ「楽しそう」でしたよ?
…楽しそう……?
―ええ、楽しそうでした
これはあくまで所感ですが
「楽しむは 才能のひとつ」
だと思ってます
………………
―あなたは、その大切なものを
誰かによって捨てられてしまった
…のでは無いですか?
………………っ
―そこで、私の出番かな?と
少々居眠りしているあなたに
こうやってしゃしゃり出てみました
気を悪くしたらすみませんね
……………いえ
……あの、わたし……
―……どうぞ
お好きに喋ってくださいな
…私の「楽しい」は…
私の「夢」は…、元に…戻りますか?
―そうですね…
あなたの場合、
元に戻ると言うよりは
これから新たに「育て始める」
と言った感じかもしれません
…育て…始める……?
―ええ。
実は本来「夢」や「楽しい」など
好奇心などにまつわるものは
確かに幼少から基本は備わってます
しかし、
あなたのように誰かによって
捨てられてしまったり
あるいは上手く育たなかったり
そういったことはたまにあるのです
…悲しいことですけど
………そう…ですか…
―もっとも、
他にもそういう人がいるからと言って
あなたが納得できるかどうかは
間違いなく別問題でしょうから
まずは、あなたのその心を
少しでも良く育つ環境に
してあげることが肝心かとり。
………でき……ますか?
あなたには…
―私は…そうですね、
あくまで、あなたを
可能な範囲で
支えてあげる程度です
ですが、あなたが望めば
その手伝いは いつでもしますよ
やってみますか?
………はい、お願いします
―いい返事です
とても…とっても、
勇気をもってらっしゃる
では、部屋を変えましょう
「プラネタリウム」という部屋へ
ご案内しましょう
〜シロツメ ナナシ〜
5/9/2025, 4:16:11 PM