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「私とあなたじゃ住む世界が違う 第四十話」

「結局、回帰光玉の犯人、分からずじまいだったね」
「何だか、スプライトが可哀想ですわね…」
志那と梨々華は、この前の古びた塔の事件について話していました。
「きっと、まったり達を統括している親玉がいるんだよ、きっと!」
「スプライトは元気で居る事を祈るばかりですわ」
「…何か、話が噛み合ってなくない?」
「ですわね」
志那と梨々華が話していると、突然、二人の背後から、
「志那ー!会いたかったよー!」
と、由里の声が聞こえて来ました。
「由里!どうしたの?!」
由里の隣には、章司と言うベージュの肌、細めで濃い焦げ茶色の目、寝癖っぽいショートヘア、黒っぽい焦げ茶色の髪色、長身だけど、少し小太りで、シンプルに近いカジュアルファッションで穏やかで優しいクラスメートの男子がいました。
「こんにちは。斎藤さん、神崎さん」
「田宮じゃん!良いよ、志那で」
「僕も章司で良いですよ」
「私も梨々華で良いですわ。ところで、何故由里は章司と一緒なのですの?」
「えーと、斉木君に会えたら良いなーって思いながら寝てたら、斉木君が現れた訳よ?スゴくない?斉木君よ?あの斉木君。んで、『良かったら僕が住む世界に来ませんか』って、言って来たから、喜んで来ちゃった訳よ!」
「僕も、似たような理由なんだけど…曽池由衣花が突然、目の前に現れて『私の住む世界に来ませんか?』って言ったから、興味本位で来たんだ」
「それで、二人はどうやってこの世界で会ったの?」
志那は、由里と章司に聞きました。
「三次元国でコンサートエリアを彷徨っていたら、偶然にも章司に会った訳よ」
「あべの男子と曽池由衣花のコンサートが同じ日じゃ無かったら、僕達二人会えなかったかも知れなかったね」
由里と章司は力説していました。

「あ、そうそう。風の噂で志那が2.5次元国に居るって聞いたから、ひょっとしたら会えるんじゃないかなー?って、思って会いに来た訳よ!」
由里は、楽しそうに話していました。梨々華は、怪訝そうに由里を見ていました。
「(おかしいですわね…何故、隠れ家みたいな場所を由里は知っているのかしら?)」
梨々華は、由里を疑っていました。
「ところでさー、由里はどこの国から来たの?この国の事を2.5次元国とか言ってるけど」
「ハァ?勿論、三次元国からに決まってるじゃん!志那って本当に鈍感だねー!」
志那と由里は、楽しそうに笑いながら話していました。だけど、梨々華は疑ったままでした。
「……」
「梨々華、安心して下さい。僕達は敵ではありませんよ?」
「…なら、私の考え過ぎでしたわね」
「じゃあ、三次元国ってどんな所?」
志那は、由里達に聞きました。
「三次元国は、芸能人がいっぱい住んでいるよ!2.5次元国は配信者の国っぽいけど」
「具体的には、芸能人と一般人が共生して住んでいるかな?でも、芸能人だけじゃなくて、他の国の移住者もたくさん居るよ」
章司は、考えながら二人に説明しました。
「あ、でもね…みーんな仲良しで治安も良いし、天国で暮らしてるみたいって移住者の人も言ってるから、暮らしやすさについてはお墨付き!」
由里は、終始楽しそうに話しました。

「へー、三次元国ってそんなに良い所なんだ」
「志那も梨々華も相談があるんだけどさ…私達と一緒に暮らさない?」
由里は、志那と梨々華に三次元国への移住の招待を持ちかけました。
「三次元国だったら、どう暮らそうが自由!規則とか決まり事とかは全く無し!」
「…でしたら、三次元国の方がメリットが大きいですわね。ココでしたら、毎日雑用をやらされますもの」
梨々華は、由里の誘いに乗ろうとしました。
「え、でも、アメジストやカインド達はどうすんのよ?男性陣の意見も聞かないといけないよ?」
「いけない、そうでしたわね…」
梨々華は、危うく誘いに乗る所だったと自分を戒めました。
「そこは、二人に任せるよー!二人で説得すれば、男性陣も納得するって」
由里は、調子良くどんと構えていました。

「(私は正直、由里とはあまり話さないから、信用はし辛い相手ですわね。でも、志那と共に行動している以上、志那の友人には協力せざるを得ません。由里とは仲良くするしかありませんわね…)」
梨々華は、腹を括りました。

10/29/2022, 10:45:26 AM