幼き頃、海は苦手だった。日が強く照りつけ、わたしの白い肌では火傷していまう。日が照りつけると、黒いマントを着る。此れが、とても暑いのだ。だから、海と船にはあまり行きたくなかった。
でも、夜の船旅は好きだった。夜空は、地上よりずっと広くて綺麗だった。
そして、海をずっと東に渡れば、わたしの思い出の地が在る。その国には、もう訪れるは叶わない。でも、大好きな国だった。幼きわたしに多くの世界を見せてくれた。大好きなお世話になった人々が、暮らす国。平和で、貧しくとも困らぬ国。
彼らの教えは、今のわたしを模っている。
師に連れられ、訪れた。海は、わたしの故郷とは全く別物だった。この国の砂浜を彩る、貝殻の美しきことに驚いた。流れ着いた大きな貝殻を耳にあてると、海の音が聞こえた。
人生で初めて感動した瞬間だった。
又、いつか…あの国に訪れ、大好きな人々と再会を果し、礼を言いたいものである。
…願わくば、叶えたい。戦の世に、無謀とも云えるこの夢を。
9/5/2023, 2:25:39 PM