『君は花になる』
絵を描かせてくれと頼んで
描かせてもらうことになった
私は告白はしないと決めていた
溢れんばかりの太陽の光を
青いカーテンで
左右から押さえつけて
前にあなたを椅子に座わらせる
あなたの長い髪が
鈍い光沢を帯びて
小さな肩の向こうに流れ
白のワンピースが静寂を広げだす
それでいて瞳は暗く
わたしを映している
透明のゆびさきから遡るにつれて
健康的な白さになってゆく
一週間ほどで描き上げた
部屋にはあなたの肖像画が飾ってある
絵画とは枯れない花だ
たとえ私がいなくなって
この絵が火につつまれてしまっても
わたしはそれでもいいと思える
なぜならわたしは
この肖像画よりも暗い瞳した
あなたと見つめ合う時間があったから
この絵を描いたあと
あなたは私に
「美しい」とだけ言い残して
二度と会うことは無かった
6/18/2025, 9:08:49 AM