9/18「夜景」
「あれはね、灯りというのだよ」
「あかり」
子が復唱する。
「そう。人間が夜になっても営みを続けるためのものだ。明るいだろう?」
「うん、あかるい。おかあさん、あれも?」
「そう、あれも灯りだ。あの窓に見えるのも、そこの扉に透けているのも、すべて。…ついておいで」
ばさりと翼を広げて夜に飛び立ち、海までの坂の屋根をすべて見渡せる電線に留まる。
「灯りがたくさん見えるだろう? あれがすべて、人間のすみかや人間が作ったものだ」
過去見てきたものに今日突然名前と意味をつけられ、子は戸惑っているようだ。
「にんげんって、たくさんいるんだね」
「ああ、そうだ」
「きれいだね」
「…そうだね」
昼間に我々を見かけては石を投げる人間たち。だがその営みも生命全てにとってみれば尊いと言わねばならないのかも知れない。複雑な思いを胸に、子の安全と成長を祈る。
(所要時間:10分)
9/18/2023, 10:13:56 AM