「あなたとわたし」
古い記憶が蘇る。
父「竜介、、プレゼントだ」
僕「なにー?」
僕「わ!これ僕が欲しかった怪獣だ!いいの?」
父「あぁ!母さんには内緒だぞ!」
僕「ありがと!」
小学校のとき、僕が友達と喧嘩をして落ち込んでいたときの父との会話
父「大きくなったら母さんと千恵を守るんだぞ」
僕「うん!約束する」
夕暮れの帰り道での父との会話
僕「うるせー!!お前には関係ないだろ!」
父「何を言ってるんだ!父親だぞ!!
悩みを一人で抱えるな、なんでも受け止めてやる!」
僕「黙れ!!お前に何が分かる!??」
高校2年生のとき、母は夜遊びを頻繁にするようになった。
ある日、母は、父さんと離婚をして、自称ホストの金髪男と再婚をし、家を出ていった。
中3の妹の千恵は母が大好きだった。ショックがあまりにも大きいみたいで部屋に引きこもるようになった。
僕にとっても、実の母親だ。現実を受けいれられず非行に走った。反抗する僕と、そんな僕が心配な父との会話。
父との時間はとても楽しかった。
楽しい会話も、口喧嘩も、真面目な会話もたくさんした。
すべてが懐かしい。
今はもう、父と会話をすることはできない。
温かくて大きい掌で頭を撫でてもらえることも、
低くて、僕の胸に響く父の声に
励ましてもらえることもない。
病には勝てない。
父は柔道をしていたため、体格がよかった。
父が熱を出したり、風邪を引いている姿もあまりみたことがない。
そんな父が病にかかるなんて、
僕も千恵も思っていなかった。
そして、僕が高校を卒業した春に、
この世を父は旅立った。
「母さんが先に逝けばよかったのに」
こんなこと、思ってはだめだと思うがどうしても思ってしまう。
父さんは僕たちにとっても、周りの人たちにとっても
優しく、いい人だった。
「神様は美しい花を摘みたがる」という言葉があるが
その神様はどこまで我儘で自分勝手なのだろうと思う。
美しい花こそ残すべきではないだろうか。
そんなことを思っても父は戻ってこないことは分かっている。でも悔しい、悲しい。
それでも生きるしかないのだ。
父の優しく、太い声や、怖いが優しい父の顔を思い出すと、飛ぼうにも飛べない。
千恵も、同じなのだろう。
母がいなくなったショックで、
切ろうとして、父に叱られた。あの時の父の顔は忘れられない。それでもいつも、叱ったあとは笑顔の父。
あんな顔を見たら、
千恵も、切ろうにも切れないのだ。
僕たちは父に生かされている。
千恵と二人で生きていくしかないのだ。
11/7/2024, 11:07:05 AM