遥かな春

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隙間の空いたカーテンから漏れた光に顔を上げた
ちらりと端を摘んでめくれば暗かったはずの外は
いつのまにか明るくなっていた
ベッドの上に三角座りしたまま寝こけていたらしい
固まったままの足をゆっくりとほぐして下ろしていく
伸ばした足にもふりとぬいぐるみが当たった
ベッドの上にはぬいぐるみが積まれている
ふかふかの山に足を埋めていく
冷えたマットレスを覆うように温もりを与えてくれるぬいぐるみたちは、皆愛らしい顔をしている
輝く黒い瞳に、曲線を描く縫い目の笑顔
その誰もが愛おしくて

愛おしくて、私はそれらを足で蹴飛ばした
笑顔の動物たちがベッドから崩れ落ちる
それでも笑顔でたたずんでいる
こんなことをしたってどうにもならないのに
どうにもならないことなど一番私がわかっているのに
それでもこの苛立ちを、愛を、苦しみを
罪のない動物たちに押し付けられずにはいられない

どの子達もお気に入りのぬいぐるみだ
全部、彼がくれた愛なのだ
たとえ彼が、もう私にくれる愛が尽きたと言っても
この子達に込められた愛が蒸発し無くなったとしても
私たちはこの子達を愛さずにはいられない
彼に渡せないこの愛を軽い綿に沈み込めるように
蹴散らした愛し子たちを、ぎゅうと抱きしめた
自然と溢れた涙が豊かな毛並みを固めたとしても
強い力が形を崩したとしても
それでも抱きしめずにはいられなかった

2/17/2023, 11:54:25 AM