(好き嫌い)(二次創作)
リーグ本部の廊下を歩いていたグルーシャは、何やら行く手がたいへん賑やかなことに気付いた。ジムリーダーたちが集まり、一般トレーナーの挑戦を受ける立場として、どんな人物なら嬉しいか、反対にどんな人物だと辟易するかをやいのやいの言い合っているようだ。至極くだらない話で、通り過ぎようとし、あえなくグルーシャは捕まった。
「グルーシャやないの。せっかくや、自分も話混ざってな」
グルーシャを捕まえたのはチリ。最近グルーシャを見掛ける度にちょっかいを出してくる、グルーシャからすれば変わり者の人物だ。少しぐらい聞こえないふりをしても通じない彼女に呼ばれ、結局その輪に加わることとなった。
ハッコウジムのナンジャモに、カラフジムのハイダイ、リーグの面接担当チリに、最近チャンピオンになったばかりのハルトと、なかなかな面子である。グルーシャは、四人がわいわい話しているのを静かに聞いていた。実力が足りないのはまだいいけどマナーがなってないとか、こちらの都合も考えずに飛び込んでくるとか、どちらかというと愚痴に偏っているが楽しそうだ。そして部屋に入ってから知ったのだが、片隅にチャンプルジムのアオキが控えている。彼もまた、話に加わるつもりはなさそうだ。
ちょうどいい、自分も壁の花になろうとするグルーシャを、しかし放っておいてくれないのがチリなのだ。アオキは放っているのに、グルーシャ相手だとそうはいかないらしい。
「なあ、自分はなんかおらんの。苦手なタイプとかさ」
「ジムリーダーが好き嫌いしても仕方ないでしょ」
「んな教科書的な答えやのうてさあ」
「そもそもそんなに挑戦者が来ないからね。好きも嫌いもない」
二、三問答を繰り返したところで、今度はハルトが最近頻発する迷惑挑戦者の話をし始めた。何人かはチリのところにも来たようで、お陰様で彼女の注意がグルーシャから離れる。ほっと一息ついて、傍らのアオキを見やれば、目を開けたまま居眠りをしていた。
6/13/2024, 6:11:16 AM