わが子が小学生の時のこと。
夏休みの宿題だった絵画で、彼はカブトムシを描いていた。画用紙の真ん中にどーんと1匹。周りにも数匹...。当時ケースに入れて飼っていたカブトムシの絵だった。
カブトムシの周りは枯葉などのおがくずが敷き詰めてあったから、わたしは当然茶色っぽい色で塗るのだと思っていた。
仕事から帰ってきてふと絵を見ると、カブトムシの周りが緑色に塗りつぶされていた...。
なんで緑?
彼いわく「この色やん...」
子どもの感性って凄いなと思いつつも、不思議だなぁと思っていたわたし。その時は、「ああ、そうなんや...」と受け流した。
後日、実家の母と話していて、ふとその出来事を話したら、「あ! あなたに言ってなかった?!」と何かを思い出したような母の口ぶり。なんのことかと思ったら、実はわたしの家系には色覚に障害があるのだとか...。
初耳だった。
色覚障害は男系に遺伝していることが多いらしく、母はわたしに男の子が生まれたら伝えておかなければいけないと思ってはいたらしいが、すっかり忘れていたのだそうだ。
兄に色覚障害があることもその時初めて知った。
ほどなくしてわが子を眼科へ連れていき、検査を受けたら、茶色と緑色の区別が非常に難しいことがわかった。
あーなるほど。だからおがくずを緑で塗ったのか...と腑に落ちた。思い出してみれば、下書きしたカブトムシを塗る時も、どの色でぬろうか?と聞いてきたのだった。
さらに振り返ってみれば、幼稚園入園の際に受けた面談時に、先生から色鉛筆の色を尋ねられた彼は、ほとんど答えられなかった。言葉が遅かったのでそのせいだと思っていたけれど違ったのだ。
ごめんね...気づいてやれずに。
幸い、色覚障害が生活に及ぼす困難はほとんどないようだ。
ちなみに、バックが鮮やかな緑色に塗られたカブトムシの絵は、思いもよらず、ある絵画展で入賞したのだった。
2/19/2024, 3:29:55 PM