今日はネタ切れなんでなんか短編にします(> <;)
タイトル:夏
田んぼの間を抜ける細い坂道を、僕は麦わら帽子を押さえながら歩いていた。
風に揺れる稲の音が、ひぐらしの声と重なって耳に残る。
遠くに朱塗りの鳥居が見えはじめると、胸の奥がふっと熱くなるのを感じた。
門の前で彼女が待っていた。
桜色の浴衣に、風になびく髪。小さな巾着を抱える姿は、まるで絵の中の人みたいだった。
「暑かったでしょう?」と笑って、巾着の中から一本のラムネを取り出す。
彼女の指先から渡された冷たい瓶は、ビー玉の音とともに僕の心まで涼しくしてくれた。
祭りの境内は、どこか素朴で穏やかだった。
焼きとうもろこしの香ばしい匂い、風鈴の音、狐の面をつけて走る子どもたちの笑い声。
ふたり並んで歩いていても、言葉はほとんどいらなかった。
ラムネの瓶が揺れる音だけが、互いの気持ちをそっとつないでいた。
祭りを抜け、道沿いに流れる川へと向かう。
空は藍に染まりはじめ、橋の上では水面が星と提灯の光を受け止めていた。
彼女は浴衣の袖を静かに押さえながら、川の流れを眺めている。
その背にそっと近づいた僕は、何も言わずに隣に立った。
「…来年も、またいっしょに来ようね」
彼女がぽつりとそう言って、ゆっくり僕の方を向く。
そして──
そっと唇が触れ合った瞬間、
夜空に轟音が響いて、大輪の光が咲いた。
どんっ。
特大の花火が、ふたりの真上で音を立てて広がる。
金、紅、藍──ひらひらと降る光が川辺を染める。
浴衣の彼女の影が、橋の欄干にやわらかく揺れた。
僕らは顔を離さず、そのまま少しだけ笑った。
ラムネのビー玉がカラン、と瓶の底で静かに鳴った。
火薬の匂いと、彼女の鼓動と、空を裂く光。
それら全部が、この夏を永遠にする。
作者からのメッセージ⤵
ちょっとだけ、お話したいことがあります。
私は、障害を抱えて生きています。
これまで言えなくて、ごめんなさい。
気持ちを言葉にするまでに、少し時間が必要でした。
でも今は、伝えられるようになった自分を、そっと誇りに思っています。
もし「障害者が書いた物語なんて…」と思う方がいらしたら、どうか静かに画面を閉じてください。
その考えに無理に触れなくてもいい…そう思えるようになりました。
そして、読もうとしてくれたあなたへ。ありがとう。
優しいあなたがいてくれることが、私にとってとても大切です。
それから…まだこうして読んでくださってるあなた、
これからも、どうぞよろしくお願い致します((*_ _)
7/14/2025, 5:01:53 PM