れいおう

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「どんな夢みたの?」

高校へ行くいつもの通学路、俺はいつも近くに住んでいる友達と一緒に登校している。その友達がある日こんなことを言い出した。
「予知夢が使えるようになったんだよ」
となんともオカルトチックなことを言ってきた。そして続けて
「今日はこんな夢を見たんだ」
となぜか怖い雰囲気を出すような言い方で話し始めた。俺は少し気になり
「どんな夢みたの?」
と聞いてみる。すると友達はこう言った。
「お前がずぶ濡れになる夢」
と。なんとも不吉なことを言ってきた。しかし、今日は大雨が降っているわけでも降る予報もないとても晴れた日。まさかずぶ濡れになることはないだろうと 
「予知夢になんないだろそれ」
と突っ込むように言うと、その瞬間ザーと大雨が降ってきた。
「え?」
と俺は驚き立ちすくむ。全身に雨があたりどんどん体が濡れてくる感覚に気持ち悪さを感じてきた。しかし、晴れだからと傘なんて持ってきてないので雨になすがなされるままどうしようもない。そんな俺を見て友達は傘をさしながらこう言った、
「ほらな、予知夢だろ」
と。いやそれより先に俺の心配はないのかよと思ったが早く雨を防ぎたいので
「傘入れて!」
と叫び傘の中に入れてもらった。この際相合い傘じゃんなんて指摘は気にしないことにする。
学校に着くといくつかのクラスメートからお前ずぶ濡れじゃんと言われ、本当に予知夢が使えたのかと少し信じてしまう。だがしかし、そんなわけないきっと偶然だろうとすぐにその考えを撤回した。何事もなく一限が終わり、二限が始まる前の休み時間。数学の用意をしていると、その友達が俺のもとに来て、こう言った。
「今日はこんな夢を見たんだ」
とまた話しかけてきた。朝と同じような話し始めだったが、少し気になったのでこう聞いた
「どんな夢みたの?」
と、すると友達はこう言った。
「この後の数学のテストで抜き打ちテストがあってお前が0点取る夢」
と。なぜ一日に違う夢を二つも見るのかは謎に思ったが、さすがに今回の夢はありえないだろうという考えにすぐに上書きされた。なぜなら数学の授業に抜き打ちテストなんて今まで一回もなかったからだ。さらに言うと俺は数学が得意な人間。その俺が数学のテストで、0点なんてあり得ない。そう考えているうちに先生が教室に入ってきてこう言った。
「今日は抜き打ちテストやるぞー。こうやって抜き打ちテスト作るの始めてだから、頑張って作ったぞー。」
と謎の報告とともに言った。強烈な衝撃を覚えた俺は、0点だけは回避しようと、問題に向き合った。しかしなんということだろう。全くシャーペンが動かなかった。理由は簡単だ。対策をしていないから、それに尽きる。結局俺は一問も手を付けることができずに、そのテストを返却した。
そして二限が終わった後、友達はこう言った。
「ほらな予知夢だろ」
と。いやもっと前に言ってほしかったと思いながらも、どうしようもないかと諦めをつけ、次の授業の用意を開始した。その後三〜六限と何事もなく過ぎ去り、放課後になった。今日は部活が休みなので、早く帰れると、下駄箱で靴を脱いでいると、その友達が俺のところに来てこう言った。
「今日はこんな夢を見たんだ」
と。またかよと思いながらも、とても話したそうな顔をしていたのでこう聞いてやる。
「どんな夢みたの?」
と。すると友達はこう言った。
「お前が帰り道に大怪我をする夢」
と。あまりにもひどい内容だと思いながらも、過去二回の実績から否定することはできずに、心配が募った。帰り道、俺はびくびくしながら道を歩いた。通り過ぎる車、人、犬、ビルの看板、電柱、溝、あらゆるものに気を使い、緊張しながら歩いていった。その甲斐あってか一回も危機に見舞われず大怪我する素振りもなく、家に到着した。なので俺はこれみよがしに
「ついに予知夢が外れたな!」
と友達にいってやった。すると、
「ごめんあれうそ。本当はべつの夢」
と言い訳がましく言ってきたので、俺はびくびくしながら帰った大変さの仕返しだと、
「じゃあなんの夢見たんだよ」
と追撃の姿勢を取る。するとその友達はこう言った。
「今までのことが全部夢っていう夢」
ピピピピッ
とアラームがなり、俺は目を覚ます。夢の中のことなのにとても疲れたなと思いながらも俺はこう呟いた
「結局夢オチかよ」

…っていう夢見たよ!」
その言葉が聞こえた時、俺は率直に、やっと終わったかと感じた。俺がどんな夢みたのと一文で終わる軽い世間話のつもりで発した言葉から、その何倍もある量を五分くらい喋り続けるとは…流石だなという思いを持ちつつ、俺は敬意を込めて、こう言った。
「いや、どんな夢だよっ!」


1/23/2024, 10:22:00 PM