G14

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 我輩は子猫である。
 名前はカワイイである。
 チビと呼ばれることもある。

 生まれた時のことは何も覚えていない。
 母とはぐれ、にゃーにゃ―と鳴いていた時、ふと浮き上がる感覚だけは覚えている。
 それ以来、吾輩は何不自由ない生活を送っている。

 人間に拾われたのである。
 その人間は、吾輩にかいがいしく世話を焼いた。
 飯をくれるし、寝床も安全、トイレも清潔にしてくれるし、毛づくろいもしてくれる。
 至れり尽くせりだ。

 しかし不思議にも思う。
 なぜ人間は、吾輩をここまで丁重に扱うのか?
 もしかして、吾輩は特別な存在なのだろうか……

 人間に聞けばよいのだろうが、人間は猫の言葉を話せない。
 心の中にくすぶる疑問は、ずっと吾輩の中でくすぶり続けた。
 長い間謎であったが、ある日答えを得た。

 ◇

 ある暖かい秋の日、窓辺で日向ぼっこをしていると、近所の野良猫がやって来た。
 最近知り合いになった野良猫で、吾輩の話し相手だ。
 名は無く、吾輩はナナシと呼んでいた。

 安全な家よりも過酷な外が好きだという変わり猫であっるが、ものすごく物知りなのである。
 きっと吾輩の疑問に答えてくれると思い、勇気を出して聞いてみた。

「そりゃあれだ。 
 人間は猫の下僕なんだ」

 吾輩は雷に打たれた思いであった。
 なぜ人間は吾輩の世話をするのか?
 たしかに下僕だと考えれば、全て説明がつく

「せいぜい顎で使ってやればいいぜ。
 やつらにとっちゃ、それが喜びなんだからな」

 ◇

 吾輩は人間の膝の上で、ナナシの言った事を考えていた。
 『人間は猫の下僕』
 吾輩の世話を焼くのは、人間が下僕だかららしい。

 前々から、吾輩は特別な存在かも知れないと思っていた……
 しかしナナシと話したことで確信へと変わる。
 やはり吾輩は特別な存在だったのだ

 そしてそんな吾輩を今まで世話した人間には褒美を取らせねばなるまい。
 主人は下僕の働きに報いなければいけないのだ。

 とあることを思い出す。
 人間は吾輩の腹を触りたがる
 正直腹を触られるのは不快なのだが、長年の奉仕に報いなければなるまい。

 という事で、吾輩は立ち上がって膝から離れ、人間の目の前にゴロンと寝転がる。
 そして、これ見よがしに腹を見せる。
 人間よ、今回は特別に腹を触っていいぞ。

 すると案の定人間は嬉しそうにして、吾輩の体中を撫で始めた。。
「あらカワイイ、今日は甘えんぼさんね」

11/16/2024, 3:35:57 PM