見咲影弥

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 ずっとこのままでいたい。
 
 彼女は僕の肩にもたれかかったまま呟いた。その言葉は碇となり、静かに心の海に沈んでゆく。重しはぴくりとも動かなくなって、僕はここに留められている。

 分かっている。このままではいけないということくらい。分かってるけど……。僕はいまだに動き出すことができずにいた。

 彼女に嫌われるのが、怖かったのだ。僕は臆病で、ろくでなしだ。どうしようもない奴だ。彼女にとっての「特別」であり続けたいと思ってしまった。彼女の一番を、このまま僕だけのものにしてしまいたい、そんな醜い欲望も生まれていた。

 君の感情が年頃の移ろいやすいもの、ただの流行りと同じようなもので、すぐ代替のものができてしまうのだということは知っている。僕のこの感情も、どうせ大人になったら笑い話になってしまうものなのかもしれない。でも、今は……この感情に正直でありたい。真っ直ぐ見つめていたい。

 ずっと、このまま。

 眠剤を飲んで、二人で仲良く永遠を目指す。

1/12/2024, 1:40:33 PM