椋 muku

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明日、雪が降るらしい。もう夏の余韻を残した秋風は冷気を纏った木枯らしへと変わってしまった。吐いた息が白くなるほど冬はもうすぐそこまで来ている。

冬になったらこの恋を終わらせようと決めている。あなたとの出会いはもう随分前のことでお互いの趣味がきっかけだった。季節が春から夏へ移り変わるように仲が深まるのもそう長くはかからなかった。あまりくさい台詞はいう柄じゃないが向日葵のように明るく太陽のように温かいあなたのすべてに知らぬ間に惹かれていたのだと思う。蕾が花を咲かせるようにあなたへ抱いた友情が好意へ変わるのも一瞬の出来事だった。仲が深まるほど抱くものが重くなってゆく。しかし、仲が深まるほどあなたは枯れゆく花のように切なく雪のように冷たい人へと変わってしまった。それでも想いは募り続ける、底知れぬように。ふとあなたを温めたいと願ってしまった。ただそれだけの事だった。その願いがあなたとの関係を曖昧に濁らせた。手を伸ばせば届くはずなのに遠い距離がもどかしい。触れているのに増してゆく冷たさが心痛い。魅力的なあなたには茨が付き纏う。傷つけられても守りたいと思ってしまうのはあなたに恋をしていたから。確かにあなたに「恋」していたから。曖昧な関係が冷めるのは友情が好意へ変わるのと同じで一瞬の出来事だった。あなたがこれ以上傷つけたくないと言い放った。涙さえも雪解けのように美しい。移ろいのあるあなたを手放したくはない。それでも離れるしかなかった。最初から想いは募るどころか解け流れ消えてしまう無意味な感情だったのだから。

この冬、あなたへの「愛」を残したままこの恋に終止符を打つことだろう。想いが芽吹く、春が来ることを願って。

題材「冬になったら」

11/17/2024, 12:13:59 PM