雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―時間よ止まれ―

こうなってからもうどのくらい経つ?
そんなことも考えられないほど、追い詰められていた。
―精神的にも物理的にも。
はっ、はっ…っは!はっ、、はっっ!!
呼吸を整えようにも、上手くいかず。
逆に過呼吸になってしまう。
いつまでもつだろう、限界はもう近い気がする…
どれだけ余裕あるかな…そう思って、
少しスピードを上げてからサッと振り返る。
っヤバい!!もう少しで追いつかれてしまう。
顔を前方に戻すと、クラッと目の前が暗くなった気がした。
視界の隅が霞む。
さっき無理にスピードを上げたツケが来た。
もうそろそろ限界かもしれない。
そして、改めて前を見てハッとした。
っアイツ!そうか、この行き止まりに追いやろうと…!?
レンガ造りの壁際まで来ると、体ごと自分が来た方を
振り返り、壁に背中が触れるまで下がった。
アイツが現れるであろう方をただじっと見つめる。
アイツは姿を現した。
こちらを見るとにんまりと口が裂けるほど笑った。
こっちへおいでとも言うように、
若しくはもう逃げられないよと見せつけるように、
腕を大きく広げながら、反応を楽しむかのように
ジリジリと距離を詰めてきた。
気をおかしくさせるためか、
笑みを浮かべたまんま何か話しかけてくる。
貼り付けたような笑み。丁度そんなだった。
頭を働かせてソイツの話を聞くことも出来たが、
それは必要ないと思った。多分どうでもいい話だ。
だから代わりにソイツを思いっきり睨みつけた。
でももしかしたら、顔が引きつってしまっていたのかも
しれない。
ソイツは、その反応を待っていたんだとでも言うように、
嬉しげな顔を見せた。
自分の体はものすごく熱くて、呼吸もままならない。
背中がツーっと冷たくなっていく。
強がるつもりだったのに、もう疲れた体が耐えきれないのと、
恐怖心に体までが支配されてしまったのとで、
つい本音が漏れてしまった。
『っヤ、ダ…こっ…ち、来っない、で……!!』
口調からも棘が抜けてしまい、歯切れも悪かった。
やがて立っていることも出来なくなり、
ふわっと膝の力が抜け、そのまましゃがみ込んだ。
っダメだ…!
絶体絶命。
その時、いきなりこちらを刺してきた眩い光に目が眩んだ。
思わず手で目を覆う。
「―時間よ止まれ」
突如、どこからか聞こえてきた、
空気を裂くような鋭く凛とした声。
手の隙間から目を細く開けると、
背の高いシルエットが見えた。
――そこで意識は途切れた。

9/19/2022, 11:18:47 AM