捨てる。捨てない。一旦保留。
捨てない。捨てる。保留、かな。
捨てない。捨てない。す、捨てる?
保留。す、捨て――。
「だーっ! 無理~!」
「またかよ! 諦めるの早ぇな!」
折角分別した山にダイブした僕に隣から檄が飛んだ。
分かっている。居候している身分で、君のスペースまで侵食するほどに物を増やした僕が悪い。
彼の雷が落ちる前にと、自主的に整理整頓し始めたところまでは良かったのに。
なかなか思い切った決断が出来なくて、結局彼まで巻き込んで、断捨離を続行する羽目になっている。
「もう僕には無理だよ~。全部大事に思えてくるもん! 僕の馬鹿!」
「別に全部捨てる必要はねえだろ? 大切なものがあるなら取っておけばいいし。まずは分類してみろよ」
僕が飛ばした物を寄せ集めながらに彼が言う。
「事務所は広いし、まだ置き場所はあるからよ。ジャッジさえしてくれりゃ、その後も一緒に片付けてやるからさ」
「ほ、本当に?」
「本当ホント」
丸めた雑誌でぽんぽんと頭を叩かれる。
おかしいな。いつもなら鬼のように怒る君が、今日は神様のように見えてきた。
笑いかけてくれる笑顔が輝かしい。
「その代わり」
油断したところへ、彼の目がギラリと光る。
「これからはネットで衝動買いは控えろよ。努力は認めてやるから、ほら! もう一回やるぞ!」
「う、うん!」
前言撤回。やっぱり君は怒っていた。
これ以上怒らせる前に終わらせないと、今日のご飯は無いかもしれない。
心を入れ換え、問題の山と向き合った。
捨てる。捨てない。
い、一旦保留。
捨てる――。
(2024/08/17 title:051 いつまでも捨てられないもの)
8/18/2024, 9:59:24 AM